クロスボーダー・ラーニングジャーニーの後半は、南三陸いりやど(http://ms-iriyado.jp/)での2泊3日の合宿。日米からの参加者約20名に加えて、9つの社会起業団体の代表やスタッフが集まり、総勢約40名で、実践的連携に向けて議論を重ねていく場となった。
WITでは過去のラーニングジャーニーの経験から、お子さんを持つ参加者や団体の方でも参加しやすいプログラムを目指し、今回のラーニングジャーニーは、お子さんと一緒に参加した方も多くいた。子育てと仕事の両立につなげたいだけでなく、子どもが一緒に参加することで、参加している私たちの心が広くなったり、将来へ思いを自然に馳せることができる。今後もこういう場が増えていくとよいなと思っている。
合宿の1日目は自己紹介と現場訪問での体験や気づきの共有を行った。そして、各団体の成長のために、日米からの参加者が、自分が持ち寄れる智慧やリソース、つながり等をその場で出し合っていく。各分野の専門的知見を持つプロフェッショナルたちから、社会起業団体側が「普段思ってもみない角度から、インサイトや質問が飛び出し」、それをきっかけに事業の進め方や相互理解がまた深まっていく。
夕食後の自由時間の間も、時間を惜しんで議論は続く。写真は、米国シカゴからの参加者Ryotaが、ギフトホープ(WIT協働先)に対して、キックスターターでのクラウドファンディングのコツを伝授しているところ。Ryotaは、大学在学中に起業し、キックスターターで約3000万円を集めた若い起業家だ。
2日目は、まずはチェックイン。一人ひとりが、「よかった、ありがたいなと思っていること」と「もやもやしていること」を話していく。初めて出会った、言語も文化もバックグラウンドも違う40名の参加者たち、当然、相互理解し協働を進めていくためには、すれ違いやぶつかり合いだってある。それを、感謝していることと共に、伝えあっていくこと、それは、協働のプロセスに欠かせない。膝を突き合わせた議論だけでなく、協働先である「りぷらす」の落合さん(おっちー)がやってくれた、全身じゃんけんぽん(!)で、笑いながら心身をリラックスして、お昼ごはんは外のテラスでのびのびと!
2日目午後は、これまでの議論を踏まえて、各社会起業団体と有志の参加者がとことん議論したいテーマを1つずつ出す。出されたテーマは、学校の時間割のようにホワイトボードに書き出され、参加者は、自分が関心のあるテーマの議論へ参加する。各団体の今後の展開(「海外展開をどうするか?」や、社会起業団体に共通するマネジメント等の課題(「助成金に頼らない経営をするには?」等)について、掘り下げた議論がなされた。
この日も夜遅くまで、ビールを片手に施設ロビーで話し合いが続く。明天(WIT協働先)は、アメリカ進出計画と役割分担まで具体化していた(写真)。
3日目は、各団体へのメッセージを参加者から送り、さんさん商店街で美味しくお昼ごはん。その後被災地の語り部ツアーに出かけたり、ゆっくり温泉ですごしたり。最後はカラオケで、みんな家族のようになりました(笑)
さて、約1週間のプログラムの結果、どんな協働が生まれつつあるか。
きずなメール・プロジェクトは、サービスの海外展開の一歩として、ニューヨーク在住の邦人コミュニティとの連携を進めている。また、わたりグリーンベルト・プロジェクトは、米国での海岸林保全の効果的事例を学ぶため、視察訪問の話が進んでおり、その為のファンドレイジングにも動き出している。明天は、漆器の良さを世界に広めるツアーへの準備が始まった。ここに書ききれないが、他の団体も、日米参加者の中からメンターを得たり、事業計画の見直しが進んだり、英語の学習を続けている団体もいる。
日米からの参加者は、ラーニングジャーニー後も各団体やWITの今後に向けて、力を合わせていく関係性ができ、また、社会起業団体や他の参加者との出会いの中で、学びや日々へのモチベーションを得て帰っていった。
参加者からの感想をいくつかここに挙げたい。
「(きずなメールの)具体的な海外展開について、(ニューヨークから参加した)ケイコさんのおかげで一歩進んだ。在米邦人向けに、今の組織のリソースを使って届けていこうと思う。」「今回のプログラムに参加して、普段は杉並区で事業をしているスタッフが、世界とつながっていることを、体と感覚でわかって、確実に何か得て帰っているのがわかった。」(参加団体 NPO法人きずなメール・プロジェクト 大島由起雄)
「全然知らない文化や言葉のところから皆さんが集まって、本当に真剣に私たちの活動を知ろうとして、アドバイスしてくれた。ありがとうございます。」(参加団体 まんまるママいわて 佐藤美代子)
「明天の海外展開を以前周囲に相談していたとき、『漆は世界に受け入れられないと思うよ』という意見をもらって、落ち込んでいた。今回のプログラムへの参加も諦めようかとおもったこともあるが、参加して本当によかった。全部この場にぶつけてみようと思って参加し、漆や明天のやろうとしていることが受け入れてもらえ、世界が漆を待ってくれているという実感をもらった。漆USツアーを実現することが、このプログラムや参加者への恩返しだと思う。」「起業して10年間、色々なワークショップに参加してきたが、これだけ自分が想像もできなかった今後への夢が広がったワークショップは初めて。自分の団体だけや日本人だけのコミュニティで話していたら、絶対なかった夢が描けた。」(参加団体 株式会社明天 貝沼航)
「本やオンラインでは学べないことを学んだ。これから自分がどう貢献していけるか、また、同世代や次世代にどう伝えていけるかを見つけたい。」(アメリカ参加者 長澤彩香 在ニューヨーク日本国総領事館勤務)
「このプログラムで出会った社会起業団体の取り組んでいる課題の全てが、圧倒的な複雑さをもっている。コートニー・マートンの『Don’t fall in love with solvability』という言葉を思い出した。…一人ひとりがこの場に持ち寄っている多様性が素晴らしい。WITはこのクロスボーダー・ラーニングジャーニーを初めて開催したということだが、非常にスムーズに運営されているのでもう何年もやっていると思っていた。…こんなに多くの社会起業家と多様な人々に出会える機会は、私もこれまで色々な経験をしてきたが、初めてで、特別なユニークな場だ。」(アメリカ参加者 ジェフリー・ホファー Omomuki財団創設者)
「(自分は日系人だが)初めて日本に来た。日本語が話せないが、理解して言語の面でサポートしてくれてありがとう。ここには、社会を良くしようという志とアイディアを持った人々が集まっている。自分が貢献するよりも、多くのことを学んで得ている。これから一緒に協力し続けられるように、ジャーニーはここで終わるのではなく、これが始まりで、日本語も勉強していきたいと思う。」(アメリカ参加者 ゴードン・エンドウ ゴードン&リーLLP パートナー弁護士)
「各社会企業団体が社会課題と真剣に向き合ってる姿が印象的。よりよく解決するにはどのようにしたら良いのか、多様なバックグラウンドを持つラーニングジャーニー参加者がジブンゴトとして、各社会企業団体と熱い議論をできたことが刺激的。」(日本参加者 須藤奈応 日本取引所グループ)
「自分はアメリカに住んで20年になるが、こんなに多様な年齢層で異なる国々のグループで協働したのは初めての経験。皆、本音でコミュニケーションし、友だちになれた。これから持続的にサポートして行けるように、私は日本とアメリカの両方の文化が分かるので、ベストをつくしていきたいと思う。」(アメリカ参加者 ケイコ・サカガミ ニューヨーク市保健精神衛生局スーパーバイザー)
世界と東北をつなぎ、社会起業家と多様な経験を持ったプロフェッショナルをつなぎ、彼らが社会をよくしていこうという試みが、より持続可能に、拡がり深まっていくように、WITはこれからも活動を続け、サポートを続けていきたい。
最後に、このような素晴らしいプログラムを実現させてくださった、参加者・団体の皆さま、米日財団や個々人の資金提供者の皆さま、コファシリテーターの桜井肖典さん、風間美穂さん(オープンガーデン)、通訳の野田百合子さん、記録やロジスティクスで大変お世話になった外和信哉さん、WITスタッフで沢山のお子さんの面倒も見てくれた大谷紗知子さん、WITスタッフの本郷由梨さん、本当にご一緒できて嬉しかったです。ありがとうございました!!
(書き手:山本未生)