WITでは、多様な分野のプロフェッショナル(WITパートナー)による社会起業家への経営支援を通じて、持続可能でひろがりを持ったソーシャルインパクトの加速を目指しています。
パートナーと投資先をつなぐプログラムをWITは提供していますが、その1つIssue Discussionのキックオフとして、WITパートナーをフィーチャーする会を2014年11月に東京で開催しました。
様々な経験や専門性を生かして社会起業家を支援するWITパートナーを毎回ひとりずつ取りあげるこの会では、今回は株式会社NTTドコモ・ベンチャーズでスタートアップ支援をされている笹原優子さんに登場していただきました。
WITパートナー各人のスキル・経験から学びあうため、今回の会は、パートナーのDiversity を紹介するところから始まりAppreciationのループをくだっていく時間になりました。ここからInvolvementへ広がっていく動きへつながっていきます。この記事では、笹原さんのプレゼンテーションやそれに続く投資先との対話の一部をご紹介していきますね。
笹原さんのこれまでのお仕事
1995年に株式会社NTTドコモに入社以来、携帯やインターネットサービスのサービス企画および商品企画、主にユーザー・インターフェース(UI)やユーザー・エクスペリエンス(UX)の企画設計などに携わってこられました。iモードサービスの立ち上げに関わったり、90Xシリーズ後の新ブランド立ち上げを率いたり。昨秋から㈱NTTドコモ・ベンチャーズに出向して、起業家との共同事業開発をしています。「ユーザーインターフェースはユーザーと提供者の間の重要なコミュニケーションツール」、ユーザーと技術の間にいるような仕事ですね。また、プライベートでは、多様な業種の女性7名で集まり、化粧ブラシや深夜番組など女性向け商品・サービスのコンサルティングもやっていらしたとのこと。
iモード立ち上げの中で学んだこと
iモード名付け親である松永真理さんのもとで働く中で、 笹原さんが学んだこと―それは 「語感の大切さ」「言葉の力」「パートナーとは対等であるべき」ということ。
真理さんと働き始めた頃、日本の大企業に珍しく皆から真理さんと呼ばれている部長をみて、恐る恐る「松永部長ではなく、真理さんって呼んでいいですか?」と尋ねてみたんです。
そうしたら、真理さんは「私の美意識のなかで “まつながぶちょう”って濁点が2つ続くのって許せないの」と返してくれました。その語感を大切にする姿と私が呼びやすいようにそういう言い方をしてくれた気遣いに感動しました。(笹原)
羊のコンシェルジェと会話する
2008年にローンチしたiコンシェルサービスについても、立ち上げにまつわるストーリーを共有してくださいました。
ユーザーのもとへ携帯電話からカスタマイズされた情報が届くのですが、当時は「携帯から人間が何かを薦められる」経験自体が新しかったので、ユーザーの受け止め方にとても気を配りました。
携帯画面にただ文字が表示されるのではなく、羊(→執事=コンシェルジュ!)のキャラクターが話しかけてくれるデザインにすることで、提供される情報に対するユーザーの受け止め方が「合っている、間違っている」ではなくて、会話している感じにすることを狙いました。(笹原)
コミュニケーションを通じて人々をHAPPYにしたい!
現在、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズで、プランニング(シードより前)から起業家と事業発掘を行う39Worksプログラムを担当しています。ドコモのアセットを使っていただきながら共に新しいビジネスモデルをつくっていきます。
仕事の中で心がけていることは、「言葉は人々の心の触れる強いパワーを持っている。使う言葉の選び方を妥協してはいけない」そして「衝突を恐れないこと。それを乗り越えたとき、もっと近づける」ということ。(笹原)
ぜひ「コミュニケーションを通じて人々をHAPPYに」する夢、さらにかなえていってください!
どうしてWITパートナーになったんですか?
投資先からの質問にこう答えてくださいました。
大企業で働いていて、世の中に貢献している感じがもちにくいことがたまにあります。私は、世の中に正しいことを届けたい、と思っているので、もちろん社会貢献したいというのはありますが、自分の中でバランスを取りたい、というのがあります。どの会社でも起きますが、よりよいサービス追求だけでなく、コストをおさえるなど、時として企業としてやらなければならないことと直面する時もありますよね。
そういう時に、(WITに入ることで)会社での仕事との上手いバランスがとれ、会社の仕事にも前向きに向かえます。
WIT投資先とのコラボも形になり始めました!ドコモの育休者向けセミナーで、マドレボニータの産後女性の健康に関するパンフレットを配布したり、ウェブサイトで情報発信したり。
こうやって自分のことを棚卸しできる機会に恵まれることは本当にありがたいし、人がどこに共感してくれるのかということは非常に興味深い。元気とちょっぴり自信をもらえました! (笹原)
WIT投資先からは、「日々すごしていると足元ばかりに集中しがちだが、ドコモという大企業の話を聴くことで、自分の団体そして社会全体として何をしていくか、ということを考える機会になった」「優子さんの言葉に魂をいただき、活動の活力になりました。今進めている新規プロジェクトについてぜひ相談させてください」などの感想が聞かれました。
おわりに
笹原さんの言葉の受けとめ方に対する気遣いは、テレコミュニケーションだけでなく、どのような商品やサービスを提供する事業にとっても重要です。社会起業は顧客だけでなく、ドナー、スタッフやボランティア、行政、事業提携相手など多様なステークホルダーを相手にしています。その分だけ、言葉に込める魂やスキルも大切になってきますね。
異業種間の智慧をかけ合わせることで投資先の事業のヒントや、パートナーの本業へのインスピレーションが生まれていったら、と願っています。
次回は12月に行われたパートナーを囲む会の記事です。お楽しみに!
文責 山本未生