Complexな社会課題にチャレンジする起業家を応援したい!

日々会ってお話したりWITを応援してくださる方々からいただくご質問で多いのが、「WITの投資先ってどうやって決めているの?」です。
そこで、今日はどんな観点をもって、支援させていただく社会起業家を決めているか、お話したいと思います。
 
社会起業家が取り組む課題には、3つのタイプがあるといいます(スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビューの2014年8月号、Strategic Philanthropy for a Complex World より)

1つ目は、シンプルな課題(Simple challenge)。「資源が足りない学校に資金提供をすることは簡単なことではないが、シンプル(単純明快)な課題ではある。」

2つ目は、複雑な課題(Complicated challenge)。「教師の成績を向上させるのは、複雑な課題である。教師の成績は多くの変数に影響されるし、教師の質を測る尺度は確率されていない。けれども、成功事例について十分な調査をすれば、何が重要な変数や尺度なのかを特定したり、それらを理解した上で改善することはできる。」

3つ目が、複合的な課題(Complex challenge)。「教師を訓練するという目標から、教育システム全体にわたって生徒の達成度を上げるという目標へ移った途端、複雑な問題から複合的な問題へとシフトする。生徒の学力向上は、学校環境、家族環境、クラスメートとの関係、ロールモデルとなる大人がいるか、果ては栄養状況まで、いくつもの互いに影響しあう要因が絡み合っている。」

(括弧内は同記事より引用。訳は山本未生)
 
広く社会というシステムを変えるということは、ある場所で成功した事例をそのまま適用できなかったり、思わぬ追い風や向かい風がつきものだったりします。

WITが応援しているのは、このComplex challengeに取り組む社会起業家たちだと言えます。多様性に開かれたしなやかな市民社会を生み出すことにつながるような、種々の社会課題へ向き合っている起業家を支援しているのです。
 
そのような社会起業家たちと共に、Complex challengeの解決へ向かっていくためには、いくつかの資質が重要だとWITでは考えています。それを表したのが、次の投資先選定基準です。
基準といっても、最初から全部できている起業家はいないと思いますし、基準に白黒つけて選ぶわけではありません。WITの支援を通じて、共にこれらの資質を具現化できていけるか、というポテンシャルを見る観点で、ご一緒させていただく投資先を決めています。

 1. ソーシャル・アントレプレナーシップ (Social Entrepreneurship)
    高い社会的目標の実現に専念しており、かつ、問題解決を担う人々(当事者)に
    新しい可能性を提示しているか。
 
 2. 問題解決のデザイン (Systemic Design) 
    社会問題を構造的に把握し、それを持続可能なビジネスモデルで解決できるか。
 
 3. 支持基盤の強靭さ (Resource Mobilization)
    地域のコミュニティを巻き込み、セクターを越えた協働を生み出し、
    持続可能な資金調達を可能にしているか。
 
 4. 社会的インパクトの拡大への準備 (Readiness for Scalability)
    有能な人材を継続的に確保し、無駄の無い業務フロー、体制を整え、ITを通じて
    更なる効率化を図っているか。
 
 5. サステイナビリティ (Sustainable Impact)
    経営体制を補うアドバイザリーボード、ボードメンバーを選定し、上位の人材の
    主体的な参画を可能にし、社会的変化を評価、計量、公表しているか。
    また、リスクを適切に評価・管理し、その対策を打っているか。
 
 6. 変革への意志と信頼関係 (Trust and Commitment for Change)
    困難な意思決定を可能にする柔軟さや備えがあり、また、WITとの信頼関係にもとづき、
    その意思決定を精緻でかつ機微を踏まえた柔軟なものにできるか。
 
例えば、投資先のひとつ、ホールアース自然学校福島校では、「1人ひとりが『人・自然・地域が共生する暮らし』の実践を通じて、感謝の気持ちと誇りを持って生きている。…そんな社会を目指しています」。(ホールアース自然学校より)

福島校代表の和田さんは、そのためにできることを様々な観点から考え、自然キャンプを行ったり、環境教育ができる若手リーダーや教員を育成したり、福島県内の他の子ども支援団体と連携したり、と幅広い活動を、多様なステークホルダーと協力しながら行っています。しかも、その解決策は一度始めたら固定されるものではなく、受益者の状況や外部環境によって柔軟に対応していくことが重要です。
 
最終的に目指す社会、そこで人々にどういう状態でいてほしいか、はいつでも真摯に見つめ、そこに至る道筋については、周囲との信頼関係を大切にしながら、創発的につくりだし実践と検証を繰り返していける、そんな起業家たちをWITは応援しています。

WITの投資先を、こんな視点からみていただけると、きっと、生み出したい社会、システムレベルの変化の可能性にわくわくすることと思います!!

文:山本未生、投資先選定基準:加藤徹生・山本未生(編集)

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