7月上旬にWITが開催したクロスボーダー・ラーニングジャーニーは、ありがたさで一杯で夢のような1週間だったので、私自身が感動や葛藤や感謝や野心や様々な感情の水に潜っていたところから、ようやく落ち着いて文章に落とせるようになってきたよう。
まず参加してくださった一人ひとりへのただただの感謝。一人ひとりの顔や発言や声が、日々心に浮かんでくる。皆さんが持ち寄り、その場で生んだエネルギーは、社会に何かを生み出そうとする想いであふれていた。
参加者たちは、出会って一週間でプログラムが終わるころには家族のようになり、プログラム後も参加者同士が、東北や東京、関西、ニューヨーク、ワシントンDCで会うなど、会合が続いている。
そしてプログラムの目的である 「分野や場所の違いを超えた実践的連携を通じて、東北の社会起業団体のインパクトがより持続可能な形で深まり、拡がる」、「WITコミュニティが、クロスボーダー/クロスセクターのコラボレーション・プラットフォームとして成長する」 に向かって、参加した社会起業団体と日米のリーダーたちの間で、早くも実践的連携が動き出している。
このクロスボーダー・ラーニングジャーニーは、7月6日から12日にかけてWITが開催したプログラムで、実施にあたっては、WITパートナー、アンバサダー、プログラム参加者、そして米日財団から資金面でもその他の面でも多大なご協力をいただいた。(プレスリリース記事:http://www.rise-tohoku.jp/?p=13310)皆さまからのご支援に、改めて心より御礼申し上げます。
参加したのは、WITが経営支援や「システムレベルの変化のための協働」を行う9つの社会起業団体に加えて、アメリカ合衆国(以下、米国またはアメリカ)から多様な分野のリーダーが11名、日本から9名。総勢40名以上のプログラムとなった。9団体の名称は下記のとおりで、その取組テーマ等はhttp://worldintohoku.org/portfolio/ をご参照ください。いずれも、東北の社会課題解決や新しい市民社会づくりに携わっている団体だ。
NPO法人アスイク
NPO法人吉備野工房ちみち
一般社団法人りぷらす
NPO法人GIFTHOPE
NPO法人きずなメール・プロジェクト
まんまるママいわて(任意団体)
株式会社 明天
NPO法人わたりグリーンベルトプロジェクト
世界ちょうどいい研究室
日米からの参加者は下記のとおり。ご覧のとおり、すごいプロフィール(肩書)を持つ方が集まった。ただ、彼らに来ていただいたのは、プロフィールがすごいからではない。インタビューや応募書類の中で触れた人柄、東北のために何かしたいと思う気持ち、そして一人ひとりの経験や専門性が参加社会起業団体の情熱やニーズと化学反応を起こすだろうと考えたからである。参加した社会起業家の中には、この顔ぶれを見て、「ビビッて」いたという方もいるが、それは南三陸での合宿で吹き飛んだ。フランク、率直でオープンで、飾らない人ばかりだから。
クリスティーナ・アメージャン、 一橋大学 他
藤島敬太郎、 リクルートマネジメントソリューションズ
ゴードン・エンドウ、 ゴードン&リーLLP
キア・グリアノ、 ジョンズホプキンス大学
ジェフリー・ホファー、 オモムキ財団
加藤有也、 講談社
メアリー・カーンズ、 ハーブ・ライフスタイル、M・カーンズ・コンサルティング
サムジャナ・カナル、 国際開発コンサルタント、アショカの元ディレクター
ヴィハーグ・クルシュレーシュタ、 ギネスワールドレコーズジャパン
ザック・ロックラム、 アサクサ・ロビンソン・カンパニー
丸山拓郎、 ギネスワールドレコーズジャパン
ナンシー・マツモト、 フリーランス・ジャーナリスト
長澤 彩香、 外務省在外公館派遣員 在ニューヨーク日本国総領事館勤務
小田理代、 ベネッセコーポレーション
小川エリカ、 ギネスワールドレコーズジャパン
サフィ・クレシェイ、 Hashi Link、Give2Asia他
坂神けいこ、 スーパーバイザー/公衆衛生教育者、ニューヨーク市
スティーブ・サカナシ、 Sekai Creater
リョウタ・セキネ、 フィットネス・キューブ
須藤奈応、 日本取引所グループ
ウェルカムディナーには、ラーニングジャーニーの参加者に加えて、WITが日ごろお世話になっている方々にもいらしていただき、賑やかに顔合わせ。開催場所、にっぽんの(http://ameblo.jp/nipponno/)は、WIT社員(従業員ではなく、一般社団法人の社員)の鈴木雅映子さんの叔父様がオーナーの一人となって立ち上げられたレストラン。生産者自身がオーナーとして出資しあうモデルで、全国各地の生産者の方々から直接食材を仕入れ、素材の味を活かした料理を楽しみます。ここで食べて美味しいと思ったら、お客さんには今度はその土地に行って食べてほしい、という願いが込められているそう。美味しい料理を頬張りながら、皆と話すのは忙しかった!
続いての現場訪問では、きずなメール・プロジェクト、まんまるママいわて、世界ちょうどいい研究室、アスイク、ギフトホープ、明天、りぷらす、わたりグリーンベルトプロジェクト の8団体を訪ねた。各団体の活動現場を見たり、起業家やスタッフの皆さんから話を聴いたり、質疑応答や議論を直にすると、やはりホームページや資料で情報を仕入れるのとは違う、共感や引き寄せ合いが生まれる。各団体最大半日ほどの訪問では議論の時間は全く足りずに、お楽しみは合宿へ。
今回の現場訪問にあたって、各社会起業団体に挑戦していただいたのが、英語でのエレベーターピッチ。エレベーターピッチとは、アメリカの起業家は必ず知っていると思うが、エレベーターで誰かに鉢合わせした時に、目的階に着くまでの間に自分や自分の事業について相手に興味を持ってもらい、その後の何かにつなげるための、会話調の口上である。それは、以前から会いたいと思っていた有名な投資家かもしれない、あるいは、見ず知らずの未来の支援者かもしれない。30秒だろうと2分だろうと、自分のことを知っていただき、相手とのつながりの糸筋をたぐる、大切なスキルである。
というわけで、アメリカ人参加者に会った時に、このエレベーターピッチを英語で各団体の代表ができるようになっていよう!という、野望を持って、ラーニングジャーニーの事前に3回のスカイプレッスンを行った。・・・詳細は省くが、結果として、全団体がエレベーターピッチを英語で参加者の前で行いました!英語を実践で仕事で使うのは、殆どの起業家が初めてだったと思うが、皆さん素晴らしい挑戦!もちろんエレベーターピッチの後に、さらに突っ込んだ質問や会話が続くわけですが、そこは通訳の力も借りればいいところ。言語の壁を越えるというのは、お互いに「理解したいな、伝えたいな」というところから、少しずつ双方が歩み寄っていくこと。
各団体の現場訪問のハイライト(目玉)を写真でご紹介。
8日夜には、2日間半の現場訪問を終えて、仙台で夕食会。米国カリフォルニア州からの参加者サフィは、この日で帰り合宿には参加できないので、皆で別れを惜しみました。サフィは参加者の中でも、多くの経験を積んだ、有能な起業家であり社会貢献活動家。彼が創設当初から関わりCEOを務めたASTリサーチという会社は、驚くべき速さでフォーチュン500企業に入り、その後サムスンに買収された。サフィは、自らの業績を全く奢ることなく、ラーニングジャーニーが始まる前から、参加者一人ひとりに連絡を取り、知り合うことに努めていた。夕食会の最後、「自分にとってビジネスとは、トロイの木馬である」とサフィは言って、「自分はビジネスに才能があるが、それは社会に貢献していくためのツールである。この場に集まっている人は、世界の中でも大変恵まれている人ばかりだ。そうでない人々も沢山いる。教育や女性エンパワメントなど自分にできることをやっていきたい。」と説明した。そして、「花は咲く」の歌を、日本語で歌ってくれたのである。サフィのその経験や思いやりの深さ、生き方に、私や多くの参加者が心を打たれたので、それを皆さんに伝えたくてここに綴りました。
続いて、南三陸での合宿の様子や成果は次のブログでお届け。